マリールイズはマングースの女の子。主人公がマングースとは、恐れ入る。一番の友達は、へびのクリストフである。とても興味が惹かれる設定だ。他にも登場するのは、アヒル、カメ、アルマジロにヒキガエルと、かなりのユーモア度で、選んである。
マリールイズは、ある日悪い子になり、お母さんに叱られて、家出する。マリールイズのいたずらぶりは、痛快に描かれていて、手放しで笑える。マリールイズは自分にとっての理想のお母さんを求めようと走る。だが、簡単には見つからない。というよりも、どのお母さんにも満足できない。心当たりの友達のおかあさんに自分を子どもにするように、売り込みにいくところは、なかなかしたたかで、頭が切れる。マリールイズは、繰り返し言ってのける。「私のお母さんは、私のことがきらいなの」あっけらかんと言う。いや、言ってみたいのだろう。「隣の芝生はあおい。」というやつか、友達のお母さんは、よく見えるのだろう。



マリールイズは走る走る。全体を貫いているスピード感が、読んでいるものに、早めの解決を望ませ、そのうちになんだか小気味よくなってくる。
マリールイズは走りながら妥協をしないで考える。もしもヘビのお母さんの子どもになったら・・・・もしもアヒルのお母さんの子どもになったら・・・・もしもカメの子どもになったら・・・・もしもアルマジロのお母さんの子どもになったら・・・あくまでも自己中心に考える。よくもまあ、これほど自分に都合よく考えられるものだ。魔術師のヒキガエルの助言により、ついに見つけた理想のお母さんとは・・・・安心安心の結末である。

マリールイズのお母さんは、近頃には珍しい、肝っ玉の据わったお母さんである。家出する娘にお弁当を渡し、自分も行動を起こす。黙って待っているだけではない。マリールイズは謀らずも、お母さんの手の内にあるわけである。母たるもの、こうありたいものだと思う。
愛らしくデフォルメされた、単純そうに見える絵だが、子どもの内なる欲望が垣間見えるようなマリールイズの目つきと表情は見れば見るほど楽しくなる。
子どもたるもの、こうありたいものだ。



マリールイズのスピードあふれる家出の道筋を、どうしても子ども達に体験してほしいと思い、この絵本の世界を再現してみることにした。大きな模造紙いっぱいの完成までには、かなりの時間がかかるのだが、マリールイズのファンタジー世界を堪能するきっかけになってくればと願いながら、四苦八苦で作っていった。




あひるのおうち


へびのおうち

マリールイズのおうち

完成してマリールイズをつくり、道筋に沿って走らせていく。「私をおばさんの子どもにしたくない?うちのおかあさんはもう私のこと、嫌いなの」というフレーズを、笑いながら繰り返す子どもたち。
世のお母さん方は、素直に「あなたが一番かわいい子どもよ。」と伝えているだろうか。



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