この絵本のトミー・デ・パオラの絵には、宗教的な品位が感じられる。楽しい言葉運びの詩なのだが、シーンと澄んだ空気が感じられる。登場人物に、派手な動きはなく、どの場面も非常に静かで、淡々としているように思える。クリスマスの夜が、静かにふけていく印象が強い。私が好きなのは、1ページごとに周りを囲った、幾何学模様の縁取りである。おシャレだ!どの場面も一枚の絵にして飾りたいぐらいだ。ゆっくり味わいながら見ていると、精神的な安定感がじわりと広がってくる。








こだわりのターシャ・テューダーが、描いているこの絵本は、かなり装飾的で、写実描写に優れた絵本である。全画面には、美しい濃紺色のバックに、卵型の縁取りが浮かび、その中にターシャ・テューダー独特の持ち味である19世紀前半の、写実的な情景が描かれてある。雪に埋もれた外の景色、暖炉に照らし出された部屋の様子。本当にありそうな、ある一軒の家での出来事のようだが、卵型の縁取りに施された、クリスマスの美しい装飾のせいか、夢の中の出来事のような印象がある。このサンタクロースは、かなり妖精に近い存在感を持っている。




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