ジェオポリスの街に、ものすごい雪が降る。絵本の見開きにまで、溢れ出る吹雪。これは大変なことになるぞ。吹雪に取り巻かれて、小さな赤い除雪車が、一台だけで奮闘している。この車は誰?この街の、道路管理部にいる、働きもののトラクター「けいてぃー」だ。
絵本を開いたとたんに、優れた絵本の常、見開きだけで、もう絵本に引き込まれていく。



作者バートンは、まず、「けいてぃー」のことを事細かに紹介してくれる。「けいてぃー」が、どんな力をもっているか、どんな風に動くか、細かく説明するように絵は描かれている。子どもたちの知りたいことが、バートンには、完全にわかっているのだ。次に、道路管理部のことも紹介してくれる。車の好きな男の子には、たまらない。ジェオポリスの街の地図つきで、その地図には、30もの街の施設が、描かれてある。まるで図鑑のようだ。何度見ても読んでも、楽しい宝箱のようなページが続く。1ページを完全に楽しみ尽くすのには、かなりの時間が費やされそうだ。



そして、「けいてぃー」の活躍が始まる。雪は二階の窓まで積もり、街じゅうが雪に覆われて、だれもかれも、なにもかも、じっとしていなければならないとき、ただひとり、除雪機をつけた「けいてぃー」は動くことができるのだ。
彼は、「ちゃっ! ちゃっ! ちゃっ!」と雪をかき分けてやって来る。水色のうねる縁取りがある真っ白な画面、左隅からかわいいともいえる赤い除雪車が、道をつくりながら登場する。快感の始まり。白い画面を1ページめくるごとに、「けいてぃー」の除雪した道が、うねうね、どんどん伸びていき、道に沿って並ぶ家々が、見えてくる。「けいてぃー」の前には、何もない。「けいてぃー」の後ろには、道ができ、街の景色が徐々に現れ、生活が戻っていく。うーん、気持ちいい。これこそ、かき分けるという行為の快感だ。



街の機能が失われて、東ジェオポリスでも、西ジェオポリスでも、北でも南でも事件・事故が起きている。大変だ!「けいてぃー」は、みんなを助けに、力強く進んでいく。まるでヒーローだ。ヒーローは言う。「わたしについていらっしゃい」
飛行場まで除雪をした「けいてぃー」のすばらしい仕事っぷりが、一目瞭然の最後のページは、しっかりと道ができたジェオポリスの地図。思わず、けいてぃーが通った道を指でたどりたくなる。


この気持ちよさを、子どもたちになんとか体感させてやれないか考えてみた。こうなると、一日中考える。トンカツを作りながら、突然ひらめいた。
まず、みんなで、大きな模造紙にジェオポリスの街を描く。雪を降らそう。考えたあげくのパン粉をふりかける。小麦粉といきたいところだが、それは、ちょっとリスクがある。相当量のパン粉の雪は、大当たりだった。ふりかけると、街はどんどん埋もれていく。目を丸くして大喜びの子どもたち、もうすでに頭にパン粉がひっかかっている子もいる。


そこで、小さな箱にボール紙の除雪機をつけて作った「けいてぃー」の登場。「さあ、雪かきしよう!」パン粉の雪をかきわけて進む、小さな赤い箱のけいてぃー。子どもたちは「ちゃっ! ちゃっ! ちゃっ!」と言いながら、うねうねと道を作っていく。下に描いたジェオポリスの街が現れる。もう一回。またまたパン粉を降らせて、除雪。大成功、面白いじゃないか!もう一回。
しかし・・・・・こんなことは、何回もやらせるものじゃない!いつの間にか、パン粉を集めてお山を作る子、サラサラと上から落としてみる子、「砂場」ならぬ、「パン粉場」になってしまった。子どもは遊びの天才であるべきだというのが、私の持論だが、これは想定外だった。
「けいてぃーごっこ、面白かったねえ」と言い合う子どもたちを横目に、その後始末といったら、準備の時間の三倍はかかった。お母さん方には、上履きを洗うように、お持ち帰り願い、「くれぐれもお家では、やらないように。とんでもないことになります。」と助言をした。





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