ヘルガは、器量の良いトロールの娘。しかし、誰にも負けない貧しい娘。ハンサムだけの男トロール、ラースは、その器量に惚れて、何の考えもなしに結婚を申し込んでくる。そういう男に限って、見てくれ重視の軽薄男なのだ!
知らなかったが、トロールの世界にも持参金というのがあって、それが結婚にあたっては、絶対の条件らしいのだ。そこに、金持ちのトロール娘が、親の権威と莫大な持参金をバックに、ラースに近づく。その名も「おへちゃのインジ」。持参金に目がくらみ、おへちゃでもインジにあっさりと乗り換えてしまうラース!このあたりの時点で爆笑ものだ。
またまた知らなかったが、トロールには、「結婚できない娘は、いつまでも地上をさすらうべし」という掟があるらしい。かわいそうなのは、ヘルガである。




ところが、このヘルガは、そうそう、生やさしいトロール娘ではなかった。こうなったら、自分で持参金を作ってみせる。たくましく自立したヘルガは、シッポを隠し、トロールの秘密道具を持って、人間世界にさっそうと、でかけていく。彼女の働きっぷりは、お見事の連続である。怠け者やら、見栄っ張り、欲張りな人間相手に、莫大な財産をつくっていく。
途中で、うわさを聞きつけた、おへちゃのインジが邪魔をするが、それにも敢然と立ち向かう。全く負けてはいない。壮絶で凄まじい女同士の戦いは、インジは、二度と廻ってこないだろうハンサムな相手との縁談をかけて、ヘルガは、自分の意地と名誉をかけて、2,3ページに及ぶ大迫力でくり広げられる。・・・が、笑ってしまう。
情けないのは、ハンサムラース。ヘルガの稼いだ持参金目当てに、またもや、言い寄ってくる。もうその時点で、ラースは無理!甘い言葉で言い寄ってくるラースを、毅然とそれをはねつけるヘルガのセリフは、痛快極まりない。
「女たるもの、こうあるべきだわ!」とこぶしを上げて、勝どきをあげたいぐらいだ。




そして、本当のヘルガの姿に惚れた一人の男トロールが、結婚を申し込んでくる。なんと、それは、トロールの王さまだった。 そういえば、この王さま、どこかで見たことがある・・・ページをめくり直してみると、ヘルガの活躍のシーンには、どこかで必ず、陰ながらヘルガを見守っているのだった。ヘルガは、自分の力で、幸せを勝ち取ったのだった。
待てよ。よく考えてみると結果的に、おへちゃのインジは、希望通りラースと結婚できたのだから、こちらもめでたしめでたしだ。一番馬鹿をみたのは、ハンサムを鼻にかた、欲張りな軽薄男トロール、ラースだったわけだ。どうだ、参ったか!




「神の道化師」で、あんなにも高貴で宗教的な、気品漂う物語を見せてくれたトミー・デ・パオラが、こんなにも愉快な話を世に送り出していることに、唖然とする。いやはや、笑った笑った。



娘には、たくさん友達がいるが、学生時代からの7,8人の友人グループがあり、時々集まっては、ワイワイとおしゃべりをしているらしい。お綺麗な娘さんばかり。皆さん婚期真っ只中。「この絵本、今後の参考になるわね」と、言いたいが、どうやら、かなりの自立心を持ったお姉さま方は、「そんなこと、とっくに分っているわよ。」と、言わんばかりのツワモノらしい。もう海千山千のおばさん予備軍の兆しがあるとか・・・・。しかし、恋は盲目。世の年頃の娘さん方、しっかりと自立して、相手を見定めるべし!




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