工場見学

NO.6 

Vaupel & Heilenbeck Wuppertal,Deutsch
/ドイツのリボン工場を訪ねました。


郊外型の巨大ショッピングセンターが増えつつあるヨーロッパですが、ドイツではまだ少なく、(何か法律があるのでしょうか?)町にはそれぞれ商店街があり、広場のマルクトもとても活気があります。
大量に買いだめするのではなく、その日の食材を買うために出てくるので、みんなが買い物かごやエコバッグを持っています。

どんな小さな町にも必ず1件は刺繍やさんがあるほど、ドイツでは昔から刺繍が盛んです。
リネンバードサイトでお世話になっている井出さんも、ミュンヘンで、さっそくワークショップを始めているそうです。

ケルン、デュッセルドルフ、ドルトムントといった大都市で囲まれた、ノルトライン・ヴェストファーレン一帯はドイツの経済・産業の中心です。その中でも今回訪れる人口約40万人の都市、Wuppertal(ヴパタル)は古くから繊維工業の中心として栄えてきました。
いつも繰り返しになりますが、そうした製造業は人件費の関係から、どんどん西ヨーロッパから姿を消しつつあります。ヴパタルも例外ではなく、繊維でもなにかニッチな分野に特化した小規模な工場が、残るだけです。

Vaupel & Heilenbeck(以下V&H)は創業してまだ20年余りです。当地にあった工場が閉鎖されていく時に、設備を買い取って刺繍分野に特化することで事業を始め、地道で順調な活動を続けています。



ヴパタルの自慢、かつ名物、空中モノレール。首都高速のように、町の中の川の上を走っているのですが、高いところにあり日があたることで、川にも自然が残されています。



工場の入り口は普通の家みたいで、中にはいってすぐの階段もなんともレトロです。



ここで織られる刺繍用の生地は、幅が2.5cmから45cmまでで、素材のほとんどがリネンです。すごいのは100年前の機械も現役で働いていること、こうした特殊織機は世界中で限定的な需要しかないため、織機の更新が進んでいません。 100年前は手動で動いていた機械が、今はモーターがついていたり、部分的に部品が変わっていたりしますが、基本的な構造、部品はまったく変わらず、オークでできた木製部品が数多く使われています。生地は織りあがってから、処理や、染色されることはありません。色物の生地はすべて先染めの糸が使われます。横糸のかせはとても小さいので、すぐに終わってしまいます。このかせは20分ほどで終わり、また手で取り替えます。
このようにして、わずか5cmほどの幅の生地を1m織るのに、1時間かかるそうです。逆にそのスピードだからこそ、リネン100% のものを織ることができるといえます。



リネンリボンやバンドの製造は、通常の布地の生産と概ね同じですが、古い織機で動きが遅く、また幅狭のために頻繁に縦糸の位置が入れ替わるので、見ていてもあきません。
織られていく様子がとてもわかりやすく、昔の人もこうして作っていたんだと納得させられます。



「こんなものもできるんだ」といって、かわいいリボンを織ってみせてくれました。



現在主流の高速リボン織機は、速度を上げるために、糸を2本どりしたり、強度の高い合成繊維をミミに引っ掛けたり、さまざまな工夫がされています。V&HでもAIDAと呼ばれる生地にはこの高速マシンが使われていますが、その他は伝統的でもともとのリネン素材にあった方法で、今日もリネンバンドが出来上がって生きます。



工場で働く人たちは、織物のことはもちろん、機械に強くないといけません。機械のメインテナンスは、創業時からいる工場長の役目です。
説明中も、筬(おさ)をぶらさげるところの結び目が切れかかっているのを見つけて、すかさず修理。
このダマスク織ができる織機も、70歳以上だそうです。



縦糸を整経する機械も古く、もとは手動であったところに、モーターが追加されました。



古い機械はすべて地元で作られたものです。BARMENは合併前の古い町の名前らしい、ドイツでも市町村合併があったのです。



刺繍糸はリネンとコットンがありますが、一かせずつこれも手でくるくるにされているのです。


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