子どもアートの窓

デザインすること


子どもの絵は、子どもが語る物語である。「これはね、こうなってるよ」という、その子の頭のなかにある物の捉え方、見方が表現となって現れる。
まわりの大人はちゃんと聞いてやらなければならない。
「うちの子絵が描けないんです。」という前に、「お母さん、ものの見方を育ててあげてますか?」と言いたい。


1.「印象」で描く

例えば、ゾウを描くとしよう。
年少の子どもは、ぞうは大きな固まりとして見ている。そして鼻が長い。この印象が絵になると、こうなる。まだ、どの方向から見た絵なのかも分からない。大まかな印象で描いている。

これはニワトリの絵。おそらく、「ふわふわで、とさかが赤い・・」ぐらいの印象しかないだろう。白いふわふわに、赤いのは「とさか」、黄色いのは「足」。これだけで、なんとなくニワトリになっていくのだからすごい。
横から見た絵が多い中、灰色の画用紙の子は、正面から見た絵になっているのが興味深い。こっちに笑いかけているようなかわいいニワトリだ。 



2.「どの方向から見るか」で描く

年中になると、ものの見方が細分化されてくるので、もっと形の分析ができる。また言葉の発達につれて、ゾウについてのいろいろな知識が入ってくる。足は4本で太いとか、耳が大きくて顔の両側にあるとか、しっぽはそんなに長くないとか。それが表現されると、こうなる。


ゾウをどのようなとらえ方で描いているか。絵から伺える子どもの見方は、とても大事で、大人の目から見て不自然な形に見えても、表現力を疑ってはいけない。子どもの絵から学ぶことはたくさんあるのだから。


横から見た体と正面から見た顔、鼻はおそらく横からだ。いろいろな角度から見たゾウがいいバランスで描けている。大人には真似のできないいい絵だ!
以前、思いもつかない見方でゾウを描いた子がいた。正面から見た顔を描いたので、てっきり体は顔の横に描くだろうと思いきや、顔の外側に線を描き始めた。「それなあに?」と聞くと「背中だよ」んんん・・・?「じゃあお腹は?」「顔の下に描く」なんだ?どういうこと?あっという間に顔の周りに線を描いた。こんなふう・・・


なんと、正面から見た体を描いていた。足をこんな風に描き、出来上がり。

なるほど、見事だ!念のために聞く。「しっぽはどうする?」すると、画用紙を裏向けにして、「こっちになるね。」いやはや見事な見方をしている。
最後まで自由に描かせてよかった。途中で変な助言をしていたらこの子の見方を損なわせることになりかねない。