「クロドリ」というのは、実際にも、ツガイで暮らし、一生離れることはないといわれている鳥である。立派なものだ。
仲睦まじいクロドリの夫婦のおかみさんだけが、王さまに捕らわれて、連れ去られていく。どうやら王さまは悪行三昧らしい。小さなクロドリの亭主はそのときから、勇敢な戦士に変身する。刀と盾と身につけて、兜をかぶり、太鼓を打ち鳴らして、はなっから戦闘態勢だ。テンションは上がっているだろう。
目的は、妻の奪回だ。



ただの鳥ではないことは、その目つきで分かる。野を越え山を越え太鼓をたたきながら、途中出会ったものを味方に加えて、行進していく。ねこ、アリの群れ、木の枝、川と、このあとそれらがどう活躍するのか、ワクワクするようなものたちばかりだ。
しかし、これらのものたちを、ぞろぞろと「ももたろう」や「かにむかし」のように連れていくわけにはいかない。どうやって連れていったか!そこが、この話の荒唐無稽なところ。これだから昔話は面白い。絵が、そんなばかなと言いたい内容を、絶妙の方法で表現し、見るものを、なるほどと納得させると同時に、感嘆させる。画家の絵の見せ所だ。ねこや、アリや、枝や、おまけに川までが、ひとつところで混然となっているところを想像すると、ゾクゾクするほど楽しくなる。
これを身のうちに収めているこのクロドリは、相当のつわものだ。悪徳王さまがかなうわけがない。さぞかしひどい目に遭わされるに違いない。味方についたものたちの、胸のすく活躍ぶりは、大騒ぎの4つの場面で見ごたえ十分である。クロドリの勇気と、仲間たちの活躍で、最後はもちろんめでたしめでたし。
最後の場面でのクロドリの仲むつまじい様子は、うらやましい限りだ。



ランパンパンの行進は、心を躍らせる。子どもたちに読んだ後、太鼓や盾をつくり、みんなで行進することのなんと楽しいことか、ネコの役の子、アリの役の子、枝の役の子、川の役の子、劇遊びをすると、みんな絵本のとおりのしぐさでクロドリの仲間になっていくのは、この絵がなせる業なのだろう。
配役を決めるときに男の子の人気ナンバーワンは、もちろんクロドリの亭主。女の子の一番は、けなげに亭主の救出を待つクロドリのおかみさんなのは、この時期の女の子のお姫さま願望の表れか。もちろん、王さまになりたがる子は誰もいない。結局いつもサカイタニ王さまとなる。そのときは思いっきり悪そうな王さまになって完全に子どもたちに嫌われる。またこれも快感だ。



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