小さいひよこたちが、ある日ふと起こした行動、それは、ひたすらおひさまがいるところを、訪ね歩くということ。訪ね歩いているうちに、仲間が増え、求めるものに向かって、一歩一歩近づいていく。分かりやすさの極致である。だが、深刻さはほとんどない。あまりに情景が豊かであること、登場物達が、子どもらしい無邪気な様子であることが、この話を、ほのぼのとした暖かい話に仕上げている。

読んだ後、ほのぼのとした余韻の中、一番印象に残るのは、登場物の個性である。全員が、主人公のような印象であるものの、一派ひとからげではない。どれも、確かに個性派を持っている。ひよこは、5匹とも同じようでありながら、よく見ると、どの場面でも1匹ずつ、それぞれに行動が違う。しっかりもののもいれば、よそ見ばかりしているのもいる。ついつい遊んでしまうものや、怖がりのもの。その仕草は、子どもの集団によく似ている。一人一人の興味の対象が違うのだ。仲間になるカササギは、カササギらしく、ウサギはウサギらしく、アヒルはアヒルらしく、ハリネズミは、ハリネズミらしく生活しているところも、背景は美しい色彩に満ち、それぞれの場面を印象的なものにしている。ここは、子どもたちにはゆっくりと味わって欲しい。じっくりとページを進めたいところだ。



お話は、小さき者たちの宝探しのように進んでいく。おひさまのいる場所を、訪ね訪ねて、「ずいぶん遠くまで来たぞ。まだかな、まだかな」と、期待が高まってきたころに、ついにおひさまの居場所に到着。ずいぶん遠くまで・・・と感じさせるのは、ページをめくるたびに現れる、この画家お得意の「道のり」の絵がなせる業である。スピード感のある「マリールイズいえでする」の道のりとは、また違う、まったりとした道のりである。

ついにたどり着き、おひさまをよみがえらせるあたりは、子どもらしい発想の仕立てとなっていて心温まる。おひさまは、よみがえることができるのか!次のページをめくったときの驚きといったら、子どもたちも思わず「わあ!」と声を上げる。これが、この画家の物語解釈の力だ。



最後に、何事もなかったような、温かい日常に戻って、お話が終わったとき、子どもたちは「ふぅーっ」と息をつく。そんな時、この絵本が持つ冒険物語の吸引力を実感する。
小さき者たちの遠い旅、大きな仕事、楽しい大冒険が、一冊の絵本で体感することができるのだから、やっぱり絵本はあなどれないとつくづく思う。

読み聞かせの後、例のごとく、「劇遊び、しようよ!」と持ちかけたところ、いい気になっていた私に、子どもたちの痛快な一撃。 「そんなのいいよ。それより、もう一回読んで!」と言われた。なんでも劇遊びをすればいいものではないのだと、思い知らされる。「ランパンパン」のときには、あんなに喜んで劇遊びをしたのに・・・・。なぜだろう?
これは、おおいに興味の沸くところではある。「ランパンパン」は昔話で、これは創作だからか? 作る小道具がないからか? 絵の影響か? たまたまなのか?
とにかく、こうなったら何回でも読んでやることにした。



前のページにもどる