ちいさいおうち
『ちいさいおうち』:岩波書店


私が住んでいる、「たまプラーザ」を中心とした田園都市線の横浜地域では、「○○谷戸」という地名をよく見かける。「谷戸」というのは、丘陵地帯にある谷間の小川の源流域を示し、森、沼地、水田と数多くの動植物から構成される豊かな生態系を、ひっくるめての環境のことである。昔は、多摩丘陵地域に多く点在していたらしい。「となりのトトロ」の映画で見た自然描写がこの「谷戸」と、かなり近いところであろう。
今では、バス停などの地名だけに「○○谷戸」と残っているようだが、そういえば、確かに「谷戸」はあった。昔、私が学童保育の指導員をしていた時に、子ども達を連れて、探検に行ったことがある。
まだ開発途中の住宅地の中に、「赤田地域」と呼ばれるうっそうとした山があった。小山を登ると森に出る。藪をかき分けて進むと、沼があって、ウシガエルが鳴いていた。沼を回って竹林を抜けると、田んぼが広がっていて、あぜ道のわきには小川が流れ、浮き草の隙間から、めだかやおたまじゃくしが見えた。藁葺きの屋根の民家が2,3軒。庭先では、にわとりが地面を突っついていた。
けれども、探検はあっという間に中断されてしまった。突然、頭の上には高速道路。目の前には、ブルドーザーやトラックが土を盛り上げていた。
絵本「ちいさいおうち」は、私に、こんなことを思い出させる。


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私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。
  私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。
きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。




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