「いっすんぼうし」は、室町時代に書かれた「御伽草子」の中にある物語が、原型だと言われる。極小の主人公の話は、諸外国の昔話にも、たくさん出てくる。小さいものが、苦難を通って、成功するといったもので、一人前になることの象徴のように、語られるわけだ。
この絵本の画家、秋野不矩さんは、西洋絵画の特質を取り入れた日本画家である。昨年には、生誕百年を迎えた特別展が、「秋野不矩美術館」で開催されたという。そんな、日本を代表する画家が絵を描き、いしいももこさんが文を書いたとなると、この絵本が、優れていないわけがない。
室町時代さながらの様相を取り入れた、人物や情景は、原型を良く知る作者の知恵であり、美しい絵巻物を見ているようだ。主人公を取り巻くものを、一部分だけ描くという対比方法を用いて、「いっすんぼうし」の小ささを引き立てたり、人物のポーズに、大胆な動きを加えたり、起伏の多い物語を十分にサポートしている。



 


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