いわゆる「さるかに合戦」のあだ討ち話である。全国に、いろいろな語り口があり、「さる」と「かに」のやりとりや、登場するものに、違いがある。
この二冊にも、ちょっとした違いがあり、岩波書店の「かにむかし」には、「かに」の助っ人として、はち、栗、牛の糞、臼のほかに、「はぜ棒」というのが、登場する。
絵は、とぼけた風貌の「さる」と、なんだかかわいらしい「かに」に仕上がってはいるが、語りは、民話調で調子がよく、耳にとても心地よい。それぞれの登場人物が、仲間になっていく問答のやりとりは、一度読むと、くせになりそうだ。ちょっと、ユーモラスな印象が残る。
一方の「さるとかに」は、赤羽末吉さんの絵だけあって、大胆なスピード感がみなぎっている。「さる」が、次々とひどい目に合う過程は、息をもつかせぬページ展開だ。語りは、標準語で、きれいな文章だ。
甲乙つけがたい二冊である。読み比べてみるのも、面白いかもしれない。


 


…さこごに、かさじぞうへ



前のページにもどる