「かさじぞう」は、以前、国語の教科書に掲載されたことがある。このお話を、国語の授業で、どう教えていくのか・・・・。イギリスの日本人学校補習校で、国語を教えていたとき、このお話が外国で暮らす子どもたちにどう映るのか、かなり考えさせられたことがある。お地蔵さんを知らない、貧しいということを知らない、我慢よりも自己主張が先にたつ環境にいる子どもたちに、どう読むか・・・?
 段落に分けたり、言葉の意味調べをしたり、感想文を書かせたりは、どうしてもしたくなかった。教科書よりも、絵本で、ひたすら読み聞かせること。劇にしてみること。書き写すこと。私にできることは、こんなことぐらいしかなかった。
 この昔話は、なぜか、せつなくて、ユーモラスだ。この絵本を読んでから、雪の中を去っていくお地蔵さんの後姿を、自分なりに想像すると、心が踊る。
 赤羽末吉さんは、この絵を、水墨画のように、ほとんどモノクロで描いている。素朴、静寂、そして、ほのかな温かさが、じわじわと沁みてくる傑作だ。


 



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