日本の昔話についてお話する第三回目です。
じつは、今回は「本棚部屋から」の最終回。あとがきと次回予告のページもぜひご覧ください。

昔話のやり方三つ

私の故郷は、土佐の高知である。
先日、高知に帰省した折に、丁度、高知県立文学館で、「土佐のお話めぐり」という展示会があって、花見がてら、出かけていった。桜の名所、高知城のすぐ横にある展示場である。子どもの頃、よくセミ取りをした藤波の森の中にある。 いやはや、心躍る展示会を見せてもらった。



土佐の民話は、架空の昔話よりも、実際にあった伝説や世間話が多いという。それは、戸外の暮らしが多い、南国土佐の風土、土地柄を反映していて、野良仕事の合間に語る、陽気な笑い話になる傾向があったからだらしい。囲炉裏の傍で、お婆さんが語るイメージではない。
型破りな個性のおどけものや、妖怪のたぐいの陽気な話も多く、「えんこう(河童)」や「狸」や「天狗」が登場する。中でも「しばてん」は、土佐独特の妖怪である。
地域ごとに、有名なおどけ者がおり、土佐弁でいうところの、「いごっそう(頑固者)」「どくれ(へそまがり)」「ひょうげ(ひょうきん)」「とっぽーこき(ほらふき)」の楽しい話が、できあがっている。
「中村の泰作さん」とか「岩井のおかねさん」とか、「窪川の万六さん」とか。ちゃんと名前があるから親近感もわく。
このあたりになると、世間話のたぐいになるのだが。


私の遠い記憶によると、子どもの頃に、父が、よく話してくれた昔話は、「やまちち」の話と、「狸に化かされた」話と、「後免の安さんと、高岡の金さん」の話。それと、祖母がしてくれた「天狗」の話
これらの昔話を聞きながら、子どもなりに、思い描いた映像は、今も消えることはなく頭に残っている。

その話は、こんな風だったか・・・・






私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。
  私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。
きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。




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