私には、あこがれていた本棚の在りようというのがあった。それは、マイフェアレディのヒギンズ教授の部屋、または、京極夏彦の小説にでてくる古本屋、「京極堂」のようなもので、本棚は、天井にとどくまで部屋のぐるりを囲んでいる。しかも下から上まで本がぎっしり並んでいて、上の方の本を取るには、取り付けられたはしごを使うのだ。
永年住んだマンションからの引越しを機に、本のための部屋は確保した。しかし、あこがれと現実はかなり違っていて、やっと手に入れた私の本部屋は、通販の組み立て式本棚が普通に並んでいるだけの、極めて情けないことになってしまった。それでも、すべてが同じ本棚というのは、少しだけ自慢だ。
並んでいる本は種々雑多で、仏教美術の本、美術本、小説文庫本、漫画本、展覧会カタログ、幼児教育関係、そして絵本、児童書・・・・
その中でも、特に絵本、児童書は本棚全体の半分以上を占めている。それを眺めていると、一冊一冊にとっておきの話がついてまわることに気がついて、「この本はね・・・・」と誰かに話をしたくなった。

 

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私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。
  私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。
きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。




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