この絵本を思うと連鎖的に思い出す光景がある。イギリスのロンドン郊外、サリー州のサンダーステッド駅とパーレイ駅。 小さな駅のホームに薄汚れた重い列車が入ってくる。見た目も重ければ、音も重い列車。ホームに到着した車両の側面から、 バタン、バタンといくつかのコンパートメントのドアが開いては閉まる。17,8年前のBritish Railのイメージだ。 南行きの列車は動き出す。あのイギリスのどこまでも続く荒涼とした丘陵地帯をぬって走っていく。麦畑の間を、 牧草地帯にバラバラと散らばる羊の群れの間を、あの画家Constableが描いたような今にも倒れそうな大木がドカンドカンと 生えている林の間を。 かしこいビルは、黒い帽子をかぶった兵隊人形のビルは、持ち主のメリーちゃんが乗ったドーバー行きの列車を追いかけて、 ひたすら走って行くのだ。
私個人にとっての「かしこいビル」はこんなところから入っていくこともあり、思い入れの強い絵本である。 …つづきへ

イギリスの絵本には、人形が登場する話が多い。「かしこいビル」も人形だが、「ビロードうさぎ」「まいごになったおにんぎょう」「ふわふわくんとアルフレッド」などなど・・・どれも私の本棚で存在感を持って並んでいる。その中に子ども達の永遠の友達、テディベアーの話がある。
「せきたんやのくまさん」
「ゆうびんやのくまさん」
「ぱんやのくまさん」
「ぼくじょうのくまさん」
「うえきやのくまさん」
などのくまさんシリーズである。シリーズ5冊とも、表紙を開けたとたん見開きに、それはそれはかわいいくまさんの仕事っぷりが描かれてある。このシンプルな美しさをもつ見開きを見ただけでも、このくまさんのことが知りたくなってくるではないか。
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『ビロードうさぎ』:童話館、『ふわふわくんとアルフレッド』:岩波書店、
『まいごになったおにんぎょう』:岩波書店

私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。 私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。 きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。

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