新しい年が始まる。子どもたちには、四季折々の行事を教えていくのが、大人の役目であるが、私も仕事上、お正月にちなんで、必ず干支の話をすることにしている。干支についてのお話は、当然たくさんの絵本が出版されていて、楽しめるのだが、それと共に、私はできるだけ、その年の干支の動物が登場する絵本を、読むことにしている。今年は「ねずみ」だ。




『ことばあそびうた』:福音館書店


「ねずみ」といえば、私がすぐに思い浮かぶのは、「おおすみねずみ」だ。谷川俊太郎が、この絵本の中で語る、御当地ねずみのうちの一匹である。なんと、そのねずみは、不死身なのである。矢や刀が体を貫通しても死なない。不気味だ。

この絵本は、ことばの絵本である。ことばの本はたくさんあるが、どうにも気にかかってしょうがない絵本である。絵本を選ぶときに、美しい日本語で書かれてあるということを、ひとつのポイントとしたくなるのは当然のことだが、これは、美しい日本語というよりも、もっと広い意味で、日本語の凄みをアピールしている。谷川俊太郎は、天才的な発想をもとに、たぐい稀な才能で自由自在に言葉をあやつっている。確かに、「ことばあそび」である。

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『ねずみのほん1 ねずみのいえさがし』:童話屋


子どもが言葉を身につける能力は、とうてい大人はかなわない。もちろん一番に両親をはじめ、周りの大人から言葉を得ていくわけだから、周りの大人はかなりの責任があると思ったほうがいい。子どもを取り巻く環境は、かなり変化してきていて、覚えていく言葉は20年前と今とでは明らかに違うし、それは世の中が騒々しくなるにつれて、良きにつけ、悪しきにつけおかまいなしに子どもの耳に届く。そう考えると、絵本を選ぶ時、読み聞かせる時、言葉の力を意識せずにはいられない。
絵本には優れた絵も、もちろん必要不可欠であるが、写真で語る絵本もある。実物なので、ストーリーや文章はかなりストレートか、叙情的か、どちらかにならざるを得ないだろう。
ねずみ年にちなんだ「ねずみ」の本の中にも写真で語る絵本がある。リアルな写真で小さい子どもを、引っ張りながら、言葉の力を見せつける絵本である。

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私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。
  私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。
きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。




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