『THE CIRCUS IN THE MIST (霧の中のサーカス)』:Maurizio Corraini srl 1968


ブルーノ・ムナーリが、生誕百年を迎えたことは、ついぞ知らなかった。イラスト、彫刻、映像、デザイン、美術教育など多くの分野で活躍したイタリアの芸術家である。絵本は確かに、ひとつの芸術作品であるといえるが、ムナーリがつくった絵本は、大人の脳にも、かなりの成長を促す刺激的なものだと思う。絵本の常識を、あっさりと超えてしまったこの絵本は、洋書であり、私がまだ大学を出たばかりの頃に買った「イメージの冒険 絵本」という雑誌の、一番最初のページに紹介されていた。「これ見てみたい!」と思ったが、実際に手に入れたのは、それから、5,6年経った頃で、古本屋で、¥1780で買ったはず。表紙の裏に鉛筆書きで、「1780―」と書いてある。あまりに古くなったせいか、2回の渡航を経たせいか、中身は無事だが、表紙に黄ばみがはなはだしい。




これは、ひとつ新しいのを買わなきゃなるまい。インターネットで探してみる。ところが、ブルーノ・ムナーリの絵本は、今や、貴重な絵本となっており、手に入るルートは少ないことが分かった。手元にあるこの黄ばんだ古い絵本が急に重たく感じられてきた。イタリア語版でも、英語版でも、一度開いてみることに、決して損はないと断言できる。

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『闇の夜に』:河出書房新社


ブルーノ・ムナーリの絵本を一度知ったら、深みにはまる。それは手に入りにくく、ますます見たくなる。「闇の夜に」は、日本語版も河出書房新社から出ているのだが、品薄で入手困難のようだ。「霧の中のサーカス」を新しく買い求めることから始まった、ムナーリ作の絵本探しは、半ば意地になってきた。先日、やっと「闇の夜に」を手に入れて、今はもう、誰かに読み聞かせたくてしようがない。

この絵本の主人公は誰だろう。それは、絵本には出てこない。この絵本を見ている私たちこそが、主人公なのだから。ブルーノ・ムナーリの道案内で、私たちは短いけれど深い旅に出る。自分が、今まで経験したことのない、不思議な感覚の世界に連れて行かれる。


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私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。
  私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。
きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。




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