12月がやってくる。本棚から、クリスマスの絵本を取り出してみる。これもクリスマス、あれもクリスマス。次から次に取り出すと、気がつかないうちにこんなにたくさんの絵本があったのだと自分でも驚く。気分を盛り上げるために、クリスマスキャロルのCDをかける。積み上げた絵本の山を眺める。さて、どの絵本が、いいかな。一冊ずつ開いて読み始める。ああ・・・誰かに読み聞かせてもらえないかなあ。クリスマスが近づく12月の夜、ベッドに入って、となりで誰かが読み聞かせてくれたなら・・・・こんなに幸せなことはない。




『あすはたのしいクリスマス』:ほるぷ出版 『クリスマスのまえのばん』:偕成社


クリスマスの前の夜にはサンタクロースがやってくる。世界中の子どもたちが楽しみにしている夜である。そもそもサンタクロースとは何者?その答えはクレメント・ムーアの『クリスマスのまえのばん』(THE NIGHT BIFORE CHRISTMAS)という詩にある。なんと、1882年に書かれたこの詩は、『セント・ニコラスの訪れ』(A VISIT FROM ST.NICHOLAS)という題で書かれたそうで、サンタクロースに命を与えたといっていい。陽気でまるまる太った、真っ赤なほっぺのおじいさん。トナカイにソリを引かせて空からやってくる。そんなサンタクロースの定義ともいえる有様を確立した詩である。これはもう、クリスマスに子どもたちに読むべき絵本であることは間違いない。

そりは空からやってくる。トナカイは8頭いて、しかも、それぞれにきちんと名前がある。肩には袋を担いでいるし、あごをうずめる豊かな髭がある。つってある靴下全部におもちゃを入れてくれる。そんな様子が、リズミカルな詩で語られる。みんなが知っているサンタクロースは、こんなすてきな詩から語り継がれてきたのだ。
この詩には、いろいろな作家が絵を描いて、絵本として出版されている。その中から選んだ2冊の絵本が私の本棚にある。同じクレメント・ムーアの詩だが、訳者が違うので、それぞれの絵とともに違った味わいがある。
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『クリスマスのおくりもの』:ほるぷ出版


ジョン・バーニンガムは、私が大好きな作家の一人である。一番よく本屋で見かけるのは、「ガンピーさんのふなあそび」であるが、バーニンガム作の絵本は、他にもたくさん出版されていて、「ずどんと いっぱつ すていぬシンプだいかつやく」「ボルカ はねなしがちょうのぼうけん」など、私もよく子どもたちに読み聞かせた。子どもの遊び心をよく理解し、ユーモアに溢れたバーニンガムの絵本は、どれも傑作であり、クリスマス絵本ももちろん出版されている。
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『ガンピーさんのふなあそび』 『ずどんと いっぱつ
すていぬシンプだいかつやく』
『ボルカ はねなしがちょうのぼうけん』






『神の道化師』:ほるぷ出版


それは私にとって、忘れがたい絵本である。いつも心のどこかに引っかかっている。背表紙を見ただけでも、なぜか、心して読まなければと思う。以前、幼稚園年長組の子どもたちに読み聞かせたことがあったが、読んだ後の子どもたちは、何を感じたのか分からないが、無言であった。不思議な話だと思ったのか。つまらない話だと思ったのか。年齢に適した絵本ではなかったのかもしれない。
この絵本をどう理解したらいいのか、どう感じたらいいのか。読む年齢によって、いろいろな感じ方をすることができるのだろう。私だってそうだ。若い頃読んだときに感じたことと、今読んで考えることは、明らかに違っている気がする。娘には、小学生ぐらいのときに読み聞かせたと思うが、そのときのことは、私が読む声の印象しかないらしい。しかし、二十歳を越えてから、ペラペラとめくって読んでみたときには、こんなにせつない話だったんだと感じたという。
読むものに応じて成長していく、まさに「この絵本は生きている」と言っていいのではないかと、大げさなことを思う。
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私の二人の娘は本が好きです。特に上の娘は、いわゆる本の虫で、常時何冊かを平行して読み、活字であれば 新聞から包装紙までなんでも読む子供でした。長じていまは言葉の研究をしています。
さて、彼女がそんなに本が好きになったのは堺谷寛子さんが主催されていた「きらきら文庫」に1歳から6歳まで通っていたからなのです。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
堺谷せんせいの読み聞かせを輪になって身を乗り出して聴いていた子供たちの食い入る面持ち。
  私にとってはその情景はもう遠い昔のこととなりましたが、堺谷せんせいはその後もずっと彼らを恍惚の世界にいざなう仕事を続けています。
きっとせんせいは、子供たちのその眼差しの虜となっているのに違いないと私は思っているのです。




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